不埒なShangri-La

■□ more love you □■

元々細かった彼の肢体(からだ)。
十年前より少し痩せて 冬の所為か肌は荒れて、
再び切った髪はまた伸び始めて 体力も僅かに衰え始めて。
それでも十年前より、彼をもっと愛しく感じる。



■□ all □■

よく言えば無邪気、悪く言えば唐変木。
或いは自由奔放で、時に確信犯。
本心の見えぬ彼に振り回されてばかり。
でも。
それも含めて、彼のすべてが好きだった。



■□ Please catch me □■

少し休ませてくれ、
お前の体力にはついていけぬと苦く笑う。
ばーか。
だったらお前が大人しく捕まればいいだけの話だろ。
お前の唇を奪う頃には 俺だって満身創痍なんだよ。



■□ God □■

あいつがこれ以上傷つくことのないように。
あいつが生きることに対して執着を持つように。
あいつが幾久しく幸せに暮らしていけるように。
手前勝手は百も承知。
だけどもう、あんたにしか頼めないんだ。



■□ childish embrace □■

細い胴を掻き抱くたび 彼はその身を強張らせていた。
今にも泣き出しそうに顔を歪ませ、
そうはすまいときつく唇をかみ締める。
それは愛と呼ぶには拙い抱擁。
想われる事を畏れる彼を、ただ苦しめばいいと抱きしめる。



■□ my favorite □■

彼の唾液、彼の体臭、彼の赤毛、彼の存在。
俺の最高の嗜好品。



■□ 「kill me」 □■

壊れる覚悟は出来ていて、壊す覚悟は決めていた。
そう気付くのに十余年もの歳月を要したと言うのに、
出逢った頃と変わらぬ柔らかな彼の微笑を見て気付く。
彼は初めから"それ"を望んでいたのだと。



■□ surprise □■

「お前が死んだら迷わず後を追ってやる」
それは決死の覚悟で挑んだ愛の告白。
なのに。
「ああ待ってるよ」
笑顔でしれっと言ってのけてみせる彼の、
深い愛を思い知らされた。



■□ alternative □■

皆は知らない。
あいつの作る不自然なまでに歪な笑顔。
それは内に眠るおぞましい本性を隠すため。
その笑顔が途切れたとき
剣心は俺だけのものになると確信している。
その瞬間が訪れるのと、俺の命が尽きるのと。
どちらが早いか ただそれだけの事。



■□ I'm fool □■

何て事はない、身包みを剥げば皆同じ―――
それは醜い肉の塊。
そんな事、わかっていた。
けれどどうしてだろう。
「左之助・・・・・」
後悔ばかりが、溢れ出る。



■□ kiss me □■

五感の一つを委ね合う。
間近で交わす視線は扇情的で、
彼の瞳に映し出される己の何と幸せそうなこと。
そう言えば。
思いっきり仰向かされて痛んだ首の事など、
疾うに忘れてしまっていた。



■□ pride □■

自信がある。
今日よりも明日、お前を想う自信が。



■□ lullaby □■

俺は色んな子守唄を知っている。
祖母の懐かしい、さくらさんの上手な、
母の柔らかい、亡妻の穏やかな。
廓ではそれと思えない艶やかな唄もたくさん聞いた。
だけど。
お前のほど、下手くそで優しいそれは知らなかったよ。



■□ I'm lonely □■

日を追う毎に お前の居なくなった現状を受け入れられて、
日を追う毎に 逃れようの無い寂しさが襲う。



■□ black cat □■

喜怒哀楽が激しく、
鬼畜な俺様にも従順な僕(しもべ)にも変幻自在。
喉を鳴らし甘えてきたその頬を撫でてやれば、
餓鬼扱いするなと拗ねて部屋の片隅で背など丸めてみせる。
ご機嫌斜め 時々接吻、のち満面の笑み。
どこまでも気紛れな黒猫を手懐けた気分は爽快。



■□ poison □■

いっそ飲ませてしまおうか。
あいつの事だ、頼めばいとも容易く受け入れるだろう。
ああ、それとも。
俺が飲んで、あいつの口付けで起こしてもらおうか。



■□ Sham-sleep □■

笑って怒って泣いて甘えて。
左之、左之助、さの、左之。
唇を奪って、独り占めして、温もりを感じて、
えーとそれから、後は寝た振り。
呆れたように微笑む彼に、露顕したかと内心で焦る。
「この酔っぱらいめ」
・・・・・鈍感でよかった。



■□ I want you □■

「好きだよ」なんて嘘。
お前を誰よりも愛している。
殺されたいくらいに、殺したいくらいに。



■□ lost paradise □■

失われた幸福を盾に 俺は未来を拒絶する